うつ病など精神疾患を患った

後藤 千絵
京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。

うつ病等の精神疾患を患っている方へ

精神疾患の典型的な例はうつ病です。
うつ病等の精神疾患についても、労災認定を受けられる可能性があります

職場におけるハラスメントや酷いいじめ、長時間労働など、業務上の原因から心理的に過度の負荷を受けたことにより、うつ病等の精神疾患を発症した場合にも、労働災害(労災)が認定され、労災保険制度から給付を受けられる可能性があるのです。

ここでは、精神疾患について労働災害と認められる要件と、その申請方法についてご案内します。

労災認定の基準

精神疾患も、業務によって過度に心理的負荷がかかったことにより発症したことが認められる場合には、労災給付の対象となります。
精神疾患はさまざまな要因によって発病する可能性があるため、労災認定される際の審査においては「精神疾患の発症原因が業務上のものか」それとも「業務外のものか」という点が非常に重要になってきます。
できるだけ基準を明確にするため、厚生労働省は、精神疾患について労災認定を行う際の3つの要件を公表しています。

特定の精神疾患を発病したこと

まず第一に、「(うつ病を含む)気分障害」、「統合失調症」などの精神疾患を発病したことが必要です。医師に診断書を書いてもらい、労災認定の対象となる疾病を発病したことを証明します。

ただ、医師が病名として記載すれば必ず認められるというものではなく、診療録等の関係資料や、申請者本人・関係者からの意見聴取などを通じて事実確認を行い、総合的に発病の有無や発病時期が認定されます。

発病前に業務による強い心理的負荷があったと認められること

第二に、発病前(6ヶ月間程度)に「業務による強い心理的負荷」があったと認められることが必要です。厚生労働省は「心理的負荷」について「評価表」を設けており、負荷の種類ごとに通常この程度の「心理的負荷」を受けるであろうという目安を定めています。

例えば、業務の中で過失によって他人を死亡又は重大な怪我をさせてしまった、意思を抑圧されて強姦・猥褻行為を受けた、発病直前の1ヶ月に160時間以上の時間外労働を行ったなど、特に強い心理的負荷を伴うのが当然といえる出来事があった場合は、原則として「強い」心理的負荷があったと認められます。

また、職場で悲惨な事故があった、(慣習として行われることがあっても)本来は違法な行為を強要された、達成困難なノルマを課された・ノルマを達成できなかった、顧客・取引先から無理な注文を受けた、といった場合には、それだけで必ず「強い」心理的負荷と評価されるわけではありません。それぞれの出来事についての具体的な事情や、各事情が関連する程度を考慮した上で、「強い」心理的負荷といえるかが判断されます。

なお、最近話題になることが多い長時間労働がある場合は、上記の「発病直前の1ヶ月間に160時間以上の時間外労働を行った場合」以外にも、例えば次のような場合には「業務による強い精神的負担」として認められています。

発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
発病直前の2ヶ月間連続して1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
発病直前の3ヶ月間連続して1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合
転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の時間外労働を行った場合

業務以外の心理的負荷・個体側要因により精神疾患を発病したものではないこと

第三に、業務以外の要因で発病したとはいえないことも必要とされています。
第二の要件と同様、出来事の種類ごとに、受けるであろう心理的負荷の評価表が作成されています。

例えば、業務とは無関係に配偶者と離婚した、流産してしまった、家族が死亡・重い病気や怪我を負った、犯罪に巻き込まれたなど、それだけで強い心理的負荷を受けるであろう出来事があった場合には、「業務以外」の心理的負荷によって発病したと評価されやすくなります。

もともと精神疾患を患っていた、アルコール依存症であったなど、本来的に精神疾患を発症しやすい方については、それが原因での発症ではないかについて慎重な判断がなされます。

ただし、仮に私生活が順調と言える状況でなかったとしても、あくまで主な原因は業務上受けた心理的負荷であるとして労災と認定される可能性もあります。 他にも原因が考えられるからといって簡単に諦めず、早めに弁護士等の専門家に相談されることをお勧めいたします。

初回
相談料0

労働災害無料相談
050-5451-7981
平日・土日9:00~20:00

050-5451-7981

平日・土日9:00~20:00