1.建設業での労災リスクの実態
兵庫県内における労働災害の死傷者数は、製造業、陸上貨物運送業に次いで、建設業が多いという統計データがあります(兵庫労働局『令和7年(1月~7月)労働災害の発生状況』)。
令和7年に生じた「休業4日以上の死傷災害」によると、令和6年と比べると全体として(2509人→2413人)とわずかに減少しているのですが、製造業での事故は(191人→193人)になり、微増傾向にあると言えます。
2.よくある事故パターンと背景
建設業においてよくある事故のパターンとしては、墜落・転落によるものが最も多く、次いで、機械への「はさまれ・巻き込まれ」、「転倒」による怪我が多くなっています。
他には、「飛来・落下」による怪我、「切れ・こすれ」による怪我、「激突され」たことによる怪我、「動作の反動・無理な動作」による怪我、「崩壊・倒壊」による怪我、「激突」されたことによる怪我などがあります。
死亡事案には、「墜落・転落」によるもの、「崩壊・倒壊」によるもの、「交通事故」によるものがあります。
では、どのようなことが原因で建設業における労災事故は起こるのでしょうか?
建設業では、もともと重機を扱う作業や高所の作業が多く、他の業種に比べて労働災害が発生しやすいといえます。
建設業で労働災害が発生しやすい理由としては、以下の原因が考えられます。
①重機やダンプカー・クレーン等の車両による作業が多いこと
建設業は、重機やダンプカー・クレーン等の車両によって作業することが多く、重機やダンプカー・クレーン等の車両に巻き込まれたり、挟まれたりすることがあります。また重機やダンプカー・クレーン等の車両から土砂や荷物が飛来・落下し、作業員が死傷することもあります。
②高所の作業が多いこと
建設業では、高所の作業が多いことが一つの特徴となっています。高所の作業の中でも、屋根・橋梁・鉄骨・足場の作業では、作業中に足場から転落したり、墜落する事故が発生する可能性が高くなります。
③天気の影響を受けやすいこと
建設現場では、雪や雨、強風等の悪天候の中で作業を行うことがあり、労災事故が発生しやすくなっていると言えます。
④労働者の入れ替わりが激しいこと
建築現場では労働者の入れ替わりが激しく、経験の浅い作業員や新人作業員が現場に入ることも珍しくありません。経験の浅い作業員や新人作業員に対する安全教育が追い付いておらず、知識が不十分なまま現場に入ることもあり、労働災害が発生しやすい環境が原因となっていることもあります。長時間労働や過重労働、炎天下での作業による熱中症などによっても、労災事故が発生しています。
⑤建設現場が毎回異なること
建設現場は、建物が完成したら次に行くといったように、毎回作業環境が異なります。固定された作業環境(工場やオフィス)よりも、安全対策が難しく、安全な作業環境を維持することが大変であることも原因の一つです。
⑥安全対策の実施レベルに差があること
建設業とひと口に行っても、大手から零細企業までさまざまな会社があります。
安全対策に対する意識もさまざまで、実施レベルには差があるのが実際のところです。
コスト削減を重視して、安全対策を怠っているケースもあり、労災事故の発生原因となっています。
建設業で労働災害が発生しやすい理由は以上の原因が考えられますが、複数の原因が絡み合って重大な労災事故を引き起こしているケースもあります。
3.労災保険だけで不十分なケースも
実は、労災保険だけでは補償が不十分なケースがあります。
つまり、労災保険から支払われるのは、本来受けられる補償の一部にすぎないことがあるのです。
労災保険からの補償内容には、精神的苦痛に対する慰謝料や休業損害の一部は含まれていないため、労働者が被った損害の全てについて補償されていません。
特に建設現場の事故においては、高所の作業場からの墜落・落下や土砂の崩壊等で重い傷害を負う可能性があり、実際に発生した損害の全てを補償するのに労災保険だけでは到底足りないケースが多くあるのです。
労災保険で不十分な補償の部分については、別途、事業主に対して損害賠償請求をする必要があります。
ただし、建設現場では、下請業者や元請業者など複数の業者が関与していることが多いため、事故が発生した際の責任の所在が複雑になることが多々あります。
次に、元請・下請の責任範囲を安全配慮義務についてご説明します。
4.元請・下請の責任範囲と安全配慮義務
①下請業者の責任
使用者は、「労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものである」(労働契約法5条)と規定されています。
つまり、使用者は労働者に対して、労働契約上の義務として『安全配慮義務』を負っているのです。
建設現場においては、安全対策を講じる義務や、危険を防止する義務が使用者に課されています。使用者がこの義務を怠って十分な危険防止措置を取らなかったために、落下事故や転落事故が発生した場合は、使用者が責任を負います。
労働者と直接の雇用関係にある下請業者が、安全配慮義務違反として、労働者に対し損害賠償責任を負うことになります。
②元請業者の責任
本来、元請業者と、下請業者の従業員の間には直接の労働契約関係はないため、労働契約上の安全配慮義務を負うことはないのが原則です。
しかしながら、直接の労働契約関係がなくても、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触関係に入った当事者間」においては、信義則上、安全配慮義務が認められます。
つまり、元請業者と下請業者の従業員の間に「特別な社会的接触関係」があるときは、元請業者は下請業者の従業員に対して、信義則上の安全配慮義務を負うことになります。
5.相談すべきタイミングとアドバイス
以上、労働災害では損害の補償が不十分な場合に、下請業者や元請業者に損害賠償請求ができる法的根拠について、簡単に説明してきました。
法的知識が不十分な状態では、適切な請求ができないことがあります。
具体的には、請求できる損害を請求し忘れたり、金額が過少であったりするなど、本来得られたはずの給付が得られなくなる恐れがあるのです。
この点、弁護士に早めに相談しておくことで、本来受けられるべき補償内容がわかり、適切な金額を下請業者や元請業者に請求することが可能となります。
後遺障害の認定もサポートいたしますので、適正な等級認定を受けることも可能となってきます。後遺障害等級の認定次第で受け取れる金額が大きく違ってきますので、後遺障害の認定は重要なポイントです。
弁護士に早めに相談することで精神的負担を軽減することができ、より一層、治療やリハビリに専念することが可能になるでしょう。
6.当事務所のサポートの内容
当事務所は随時、無料相談を行っておりますので、まずは無料相談をご利用ください。
相談はメールやLINEでも可能となっております。
一人で悩むのではなく、できるだけ早めに専門家に相談することをおすすめします。
当事務所では、女性スタッフ全員が依頼者に親身に寄り添うことをモットーとし、一丸となってサポートに当たっております。
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