陸上貨物運送業・トラック業界での労災被害について弁護士が解説

1.運送業における労災の現状

兵庫県内における労働災害の死傷者数は、製造業に次いで、陸上貨物運送業が多いという統計データがあります(兵庫労働局『令和7年(1月~7月)労働災害の発生状況』)。

ただ、令和7年に生じた「休業4日以上の死傷災害」によると、令和6年と比べると全体として(2509人→2413人)とわずかに減少しており、陸上貨物運送業での事故も(325人→296人)と微減傾向にあると言えます。

  1. 2.運送業で多い事故パターンと原因

陸上貨物運送業においてよくある事故のパターンとしては、「墜落・転落」によるものが最も多く、次いで、「転倒」による怪我が多くなっています。
他には、「動作の反動・無理な動作」による怪我、「はさまれ、巻き込まれ」たことによる怪我、「激突」による怪我、「激突され」たことによる怪我、「飛来・落下」による怪我、「交通事故」による怪我、「飛来・落下」による怪我、「崩壊・倒壊」による怪我などがあります。
死亡事案には、「激突された」ことによるもの、「交通事故」によるものがあります。

 では、どのようなことが原因で陸上貨物運送業における労災事故は起こるのでしょうか?

労災の内容としては、トラックの荷台から落ちたと言った「墜落・転落」による事故や、運搬中の交通事故が多くなっています。
原因としては、運送業の稼働時間が長いことが、労災事故が起こりやすい環境が一因となっている可能性があります。
長期の稼働時間が原因となって、精神疾患が生じるケースもめずらしくありません。
(※ただし、精神疾患が労災に該当するかどうかについては、特定の要件が満たす必要があるとされています。)

 3.労災保険の支給内容とその限界

労災保険によって支給されるのは、以下のようなものとなります。

①療養補償給付・療養給付

労働災害により生じた傷病を療養するために、無料で受けられる給付です。

②休業補償給付・休業給付

労働災害による傷病の療養をするために休業した場合に、賃金が得られないという損害に対して、支給される給付です。

③傷病補償年金・傷病年金

労働災害による傷病が療養開始後1年6ヵ月を経過しても治癒せず完治しない場合に支給される給付です。

④障害補償給付・障害給付

労働災害による傷病が完治せずに、身体に一定の障害が残った場合に支給される給付です。

⑤遺族補償給付・遺族給付

労働災害によって死亡した場合に遺族に支給される給付で、遺族等年金と遺族(補償)等一時金の2種類の給付があります。

⑥葬祭料・葬祭給付

労災によって死亡した場合に、労働者の葬祭を行った者に支給される給付です。

⑦介護保障給付・介護給付

傷病(補償)年金または障害(補償)年金の受給者で、かつ症状が重いため現に介護を受けている場合に支給される給付です。

この中でも④の後遺障害等級の認定は、認定されるかどうかで大きく金額が違ってきますので、重要なものとなってきます。
業務災害の場合には「補償給付」や「補償年金」が支給されます。「通勤災害」の場合には、「給付」や「南京「が支給されます。
その他、社会復帰促進事業の一環として、休業(補償)給付、障害(補償)給付、遺族(補償)給付、傷病(補償)年金には、上乗せの特別給付がなされます。

 4.一人親方でも労災給付は受けられる?

労災保険は本来労働者の保護を目的としており、個人事業主である一人親方は原則として対象となりまません。
しかしながら、運送業では一人親方として仕事を行っている個人事業主が珍しくないことから、労災の加入対象となることが可能です。
具体的には、運送業の一人親方は、特別加入制度を利用することで、労災保険の加入対象となることができます。
都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通じて加入手続きを行ってください。

 5.労災保険だけでは補償が不十分なケースがあります。

つまり、労災保険から支払われるのは、本来受けられる補償の一部にすぎないことがあるのです。
労災保険からの補償内容には、精神的苦痛に対する慰謝料や休業損害の一部は含まれていないため、労働者が被った損害の全てについて補償されていません。
労災保険で不十分な補償の部分については、別途、運送業の事業主に対して損害賠償請求をする必要があります。

 6.安全配慮義務と損害賠償請求の可能性

運送業の事業主に対して、損害賠償を行うことができる可能性がある場合についてご説明します。

一般的に事業主は、雇用契約を締結している労働者に対し、生命や身体等の安全を確保しつつ労働を行えるように職場の環境を整える義務(『安全配慮義務』と言います)を負っています。
この安全配慮義務の「違反」が認められるのであれば、損害賠償請求が可能となります。
例えば、荷物の積み下ろしの作業をする際に事故が起きないよう適切な安全対策を行ったり、運送作業に利用する車両(トラックやフォークリフト等)が故障しないように定期的にメンテナンスを行う必要がありますが、このような安全対策を怠ったために労災事故が生じた場合には、安全配慮義務違反が認められると言えます。

一方で、労災事故の発生が第三者の故意・過失を原因とする場合には、第三者に対して損害賠償請求を行うことも可能です。運転中に交通事故が生じた場合の加害者への請求等です。交通事故の加害者が仕事のために運転していたような場合には、加害者の使用者である会社にも損害賠償請求を行うことも可能です(使用者責任)。
加害者が無資力であるような場合でも、使用者である会社に請求すれば、損害を確実に補填することが可能となります。

 7.弁護士への相談のタイミングとメリット

以上、労働災害では損害の補償が不十分な場合に、運送業の事業主に損害賠償請求ができる法的根拠について、説明してきました。

法的知識が不十分な状態では、適切な請求ができないことがあります。
具体的には、請求できる損害を請求し忘れたり、金額が過少であったりするなど、本来得られたはずの給付が得られなくなる恐れがあるのです。
弁護士に早めに相談しておくことで、本来受けられるべき補償内容がわかり、適切な金額を下請業者や元請業者に請求することができるというメリットがあります。
後遺障害の認定もサポートいたしますので、適正な等級認定を受けることも可能となってきます。

後遺障害等級の認定次第で受け取れる金額が大きく違ってきますので、後遺障害の認定は重要なポイントです。
弁護士に早めに相談することで精神的負担を軽減することができ、より一層、治療やリハビリに専念することが可能になるでしょう。

 8.当事務所のサポートの内容

当事務所は随時、無料相談を行っておりますので、まずは無料相談をご利用ください。
相談はメールやLINEでも可能となっております。
一人で悩むのではなく、できるだけ早めに専門家に相談することをおすすめします。
当事務所では、女性スタッフ全員が依頼者に親身に寄り添うことをモットーとし、一丸となってサポートに当たっております。
お気軽にご相談にいらしていただければと思います。

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