労災事故で死亡した場合の逸失利益(損害賠償)とは?金額は?【弁護士が解説】

後藤 千絵
京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。

労災事故で死亡した場合の逸失利益(損害賠償)とは?その金額は?【弁護士が解説】

A.死亡逸失利益とは、労災事故により亡くなったために将来の収入を喪失した損害のことです。金額は計算方法があります。

逸失利益の損賠償請求ができる場合

労災事故の発生について、会社(事業主)にも責任があれば、労働者は労災保険では補償給付を受けられない損害項目でも請求することが可能になります。
具体的には、下記の➀ないし③の請求ができます。
①慰謝料(入・通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)
②後遺障害や死亡によって喪失した将来の完全な稼働利益(逸失利益
③100%分の休業損害
ここでは、労災事故により被災者の方が亡くなった場合の逸失利益についてご説明しましょう。

死亡による逸失利益

労災事故により被災者が亡くなった場合、当然ながら、死亡以降の稼働(労働)収入を喪失します。この失った利益(収入)を死亡逸失利益といいます。

死亡逸失利益は、(労災事故前の年収)×(1-生活費控除率)×(労働能力喪失期間に対応する係数)で算出されます。

例として、当時40歳で扶養親族が3人(妻と子2人)、年収400万円だった方が労災事故で亡くなった場合、
(労災事故前の年収)400万円
(生活費控除率(※1))0.3
(労働能力喪失期間(※2)に対応する係数(※3))18.3270

400万円×(1-0.3)×18.3270=5131万5600円
逸失利益は「5131万5600円」となります。

※1 生活費控除率とは、亡くなったことで将来の収入が失われる一方で、将来の生活費支出がなくなることを考慮して、損害額算定の際に一定割合を生活費分として控除するものです。亡くなった方が一家の支柱であるか、被扶養者は何人か、一家の支柱でなければ男性か女性かなどによって、標準化された数値を用います。
※2 原則として、67歳までの年数です。67歳−40歳=27年となります。
※3「ライプニッツ係数」といいます。将来の1年ごとに発生する損害を、現時点で一度に受け取る(前受け)ために、いわゆる受取利息の反対にディスカウントされる、という理解です。令和4年現在の法定利率3%を前提として、27年に対応するライプニッツ係数は18.3270です。

労災保険から受け取った給付金は死亡逸失利益から差し引かれるのか

結論から申し上げますと、一部のみ差し引かれます。

労災事故により被災者が死亡した場合、労災保険から、①遺族(補償)年金(または一時金)、②遺族特別年金(または一時金)、③遺族特別支給金(定額300万円)が給付されます。

これらの労災保険からの給付金について、会社(事業主)に請求できる死亡逸失利益から差し引かれるのは、
①遺族(補償)年金(または一時金):一部のみが差し引かれる
「一部」はどれくらいかについてですが、賠償交渉が成立した時点までに受領済みの年金(遺族年金)分、または判決までに受領済みの年金(遺族年金)分です。
②遺族特別年金(または一時金):差し引かれない
③遺族特別支給金(定額300万円):差し引かれない
②や③が差し引かれない理由は、労災保険からの「特別〇〇金」は、そもそも損益相殺(差し引き)の対象にならないという損賠賠償上の考え方(ルール)によります。

早めの相談・依頼で安心を

一個人である労働災害に遭われた被災労働者が、たった一人で会社や保険会社とやりとりをするのは困難を極めます。

また、事故に関する資料や証拠の収集も容易ではありません。

ほとんどの方は、労働災害に遭うこと自体初めての経験です。

ご自身ではよく分からないことも多いでしょうし、どのように交渉を進めればよいのか悩み、非常にストレスを感じられるようです。

また、会社側も相手が一労働者だけとなると、「会社に責任はない」、「労働者側に大きな過失があった」、「安全配慮義務違反がない」などと強気で主張してきたり、仮に会社の責任を認めたとしても「過失相殺(割合)」で大幅な減額を主張してくる場合が少なくありません。つい弱気になって会社の言い分を素直に聞いてしまい、泣き寝入りするケースも多々あります。

そんな時、弁護士はあなたの味方となり、適切かつ正確な主張を行い、あなたの権利を守ります。

弁護士にご依頼いただくことで、会社側に責任があるのかどうかをより正確に判断し、会社側と対等に交渉することも可能になってくるのです。

「弁護士に依頼するかについては未定」という方でも、お早めにご相談いただくことで、その方の具体的な事情を踏まえた個別のアドバイスを受けることができます。ご不安を解消することで精神的に楽になりますし、今後の方針を立てる上でも参考にすることができます。

労災事故に遭われてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談なさってみてください。

ご相談は、電話やメール、LINEでも可能で、いずれも60分無料です。ご相談はこちらです。

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