
- 後藤 千絵
- 京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。
目次
労災事故で怪我をした場合の逸失利益とは?受け取れる金額の相場は?【弁護士が解説】
A.後遺障害の逸失利益とは、後遺障害を受けたことによって、将来の収入が喪失・減少してしまうという損害のことを指します。受け取れる金額には、計算方法があります。
後遺障害とは
労災事故によって重篤な怪我を負い、治療しても残ってしまった症状のことを「後遺障害」といいます。
労災事故の場合、第1級から第14級までの障害等級というものが定められています。被災労働者からの障害補償給付申請を受けて、労働基準監督署が障害等級を認定します。
身体のどこの部位のどのような症状がどの障害等級になるかは詳細に定められています。
詳しくは、労災事故と後遺障害・等級認定をご参照ください。
後遺障害による逸失利益
後遺障害を負った場合、労災事故以前に比べて、稼働(労働)能力が損なわれるのが普通です。以前と同じように稼働し、同じレベルの収入を得られなくなる可能性が高くなるのです。
つまり、将来にわたっての稼働収入を喪失・減少してしまうのです。この失った利益(収入)を「逸失利益」といいます。本来であれば手にいれることのできた利益(収入)のことを指します。
どういう障害がどの程度の収入の減少をもたらすかについては、障害等級ごとに「労働能力喪失率」というものが定められており、それに従って、逸失利益を算出するのが一般的です。
例えば、脊髄損傷により下半身不随になってしまったという場合、おそらく障害等級は第1級から第3級のいずれかと認定されることが多いでしょう。
これら(1〜3級)の場合、労働能力喪失率は「100%」とされています。労働能力を完全に喪失したとみなすということです。
また、例えば、機械に巻き込まれるなどの労災事故に遭い、骨折して治った後も右手関節(手首のこと)の可動域が、健常な左手関節の2分の1以下になってしまったという場合、おそらく障害等級は第10級と認定されます。
10級の場合、労働能力喪失率は「27%」とされています。
逸失利益は、(労災事故前の年収)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応する係数)で算出されます。
例として、年収400万円だった方が労災事故に遭い、障害等級10級の認定を受け、この当時40歳だった場合、
(労災事故前の年収)400万円
(労働能力喪失率)27%
(労働能力喪失期間(※1)に対応する係数(※2))18.3270
400万円×27%×18.3270=1979万3160円
よって、逸失利益は「1979万3160円」となります。
※1 原則として、67歳までの年数です。上記のケースでは、67歳-40歳=27年となります。
※2「ライプニッツ係数」といいます。将来の1年ごとに発生する損害を、現時点で一度に受け取る(前受け)ために、いわゆる受取利息の反対にディスカウントされる、という理解です。令和4年現在の法定利率3%を前提として、27年に対応するライプニッツ係数は18.3270です。
損害賠償請求ができる場合
労災事故の発生について、会社(事業主)にも責任があれば、労働者は労災保険では補償給付を受けられない損害項目についても請求することができます。
具体的には、下記の➀ないし③について、事業者に請求することが可能です。
①慰謝料(入・通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)
②後遺障害や死亡によって喪失した将来の完全な稼働利益(逸失利益)
③100%分の休業損害の各賠償請求
労災保険給付である障害(補償)年金または障害(補償)一時金は、逸失利益を補填する性質を持ちますが、通常、逸失利益の完全に補填するほど十分なものではありません。
一方、事故発生に責任のある会社(事業主)は、逸失利益を完全に賠償する責任を負います。
つまり、完全な逸失利益の補填は、通常、事業主への損害賠償請求によってしか得られないのです。
早めの相談・依頼で安心を
一個人である労働災害に遭われた被災労働者が、たった一人で会社や保険会社とやりとりをするのは困難を極めます。
また、事故に関する資料や証拠の収集も容易ではありません。
ほとんどの方は、労働災害に遭うこと自体初めての経験です。
ご自身ではよく分からないことも多いでしょうし、どのように交渉を進めればよいのか悩み、非常にストレスを感じられるようです。
また、会社側も相手が一労働者だけとなると、「会社に責任はない」、「労働者側に大きな過失があった」、「安全配慮義務違反がない」などと強気で主張してきたり、仮に会社の責任を認めたとしても「過失相殺(割合)」で大幅な減額を主張してくる場合が少なくありません。つい弱気になって会社の言い分を素直に聞いてしまい、泣き寝入りするケースも多々あります。
そんな時、弁護士はあなたの味方となり、適切かつ正確な主張を行い、あなたの権利を守ります。
弁護士にご依頼いただくことで、会社側に責任があるのかどうかをより正確に判断し、会社側と対等に交渉することも可能になってくるのです。
「弁護士に依頼するかについては未定」という方でも、お早めにご相談いただくことで、その方の具体的な事情を踏まえた個別のアドバイスを受けることができます。ご不安を解消することで精神的に楽になりますし、今後の方針を立てる上でも参考にすることができます。
労災事故に遭われてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談なさってみてください。
ご相談は、電話やメール、LINEでも可能で、いずれも60分無料です。ご相談はこちらです。
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